携帯のディスプレイに見知らぬ番号が映る。9作目の投稿先からの着信だった。
「○○編集部の○○と申します」
まだ10作目の製作中で、尚且つ、載せまっせ的な話も生きていた状態だったので、失礼ではあるが正直『電話来ちゃったかぁ・・・」と思ってしまった。送っておいて、そりゃねぇだろ、って言われそうだが、ちょっとお小遣い稼ぎ程度の腹積もりだったのが本音。
編集「いや〜、非情に達者だねぇ」
た、達者って。いつの時代の方なんだと、思いつつも漫画を誉められたことはもちろん嬉しいので
太郎「ありがとうございます」
と答える。受賞の知らせだろうか?それともアシスタントの斡旋だろうか?と推測していると
編集「なんで、ウチの雑誌送ったの?」
太郎「へ?そ、そうですね・・・」
参った。「漫画道 61歩目」の最後の方にも書いたように、良く知りもしないまま適当に投稿していたオイラ。苦し紛れに、
太郎「(唯一知っている)***って漫画が好きで・・・」
編集「ああ、なるほど」
で、その後、電話してきた核心に迫る。
編集「僕はねぇ、この作品いいと思うんだよ。ただ、ウチの雑誌と全然方向性が違うんだよね」
(余談ではありますが、電話の後、その雑誌は買い内容をチェックして愕然とした。確かにオイラの漫画では中性的なイケメンの中にボディービルダーがいるような違和感がある。投稿時はネットで調べて送った。)
編集「読者がウチの雑誌のカラーを求めて買っていただくからね、ウチでは評価を付けづらいんだけど、良かったらウチでやってる他の雑誌の編集部に見てもらおうか?多分、君の作風向きだと思うし」
まぁ、その雑誌じゃなきゃ絶対ヤダーッって訳では毛頭ないので、
太郎「御願いします」
編集「うまくいったらその雑誌の賞に入れてもらえるようにしておくから」
というわけで、その出版社の他の雑誌にオイラの原稿は回って行く事になった。
わざわざ掛けてきてくれて何て親切な人なんだろう、って直ぐ思ってしまうオイラはとっても単純。まぁ少しは見所があるっていうことではあると思うんだけど。
しかし、そんなことはその時はあまり重要ではなく、10作目を早く完成させようと必至になっていた。
そして、10作目の悲劇が起きる。(漫画道 61歩目参照)
本屋に直行したオイラ。
その時、ふと思ったのが9作目ってどうなったんだろう?その後連絡はないまま。
そこで、編集がオイラの作風向きだと言った雑誌を思い出す。「よし、まずそこに連絡してこの10作目を見せてみよう」と連絡を待つより動くことを決意。早速電話、アポ完了。
アポ当日。
雨の予想がハズレ、天気は物凄く良く、ドラクエのすれ違い通信を初めてオンにした日でもあった。
道に迷い通行人に助けを求め、逆送していることに気が付くも、何とか出版社到着。
編集「はじめまして」
簡単なシートに略歴を書かされ、「では早速」という流れで原稿を見せる。初めて行った出版社では大抵こういう流れになる。
編集「すごいですね。どこかで連載されてました?」
太郎「それどころか載ってもないですが・・・」
だったらさっさと載せてくれよって思う。ホント。
編集「うーん、どっかで見たことあるんだよなぁ、なんだろう」
太郎「御社の○○って雑誌に投稿して・・・」
編集「ああ、アレか、あの回って来た」
全部説明するまでもなく閃いたようで、話は進む。
編集「なるほど、なるほど。あの暗いやつかぁ」
太郎「く、暗いって」
確かに9作目は暗く切ない物語です。最後にはちょっとホワッとはしますが。これ事前の友人らの評価では涙する人もいたほど高評価だったんだけどね。うーむ。
編集「アレね、うちの賞に入れて受賞させようか迷ったんだよ。でも、ウチの雑誌を目指してちゃんと応募してきてくれた人たちに申し訳ないなってことで、○○編集部に返したんだよ」
太郎「だったら、また送ったら受賞しますかね」
編集「笑 そりゃ無理」
思わず冗談を言ってしまう変な癖があるんだよねぇ、オイラ。たまにこれがすべって空気が固まる。
ただ、割と誠実なとこなんだなと少し思ったりもした。
編集「しかし、今回のはどうするかなぁ、ページ数がちょっと多いんだよね」
確かに少し長い、載せる前提で打ち合わせして作った作品です、なんてことはここではタブー。
編集は作品を見返しつつ、
編集「画力もあるけど、構成力がすごい。なかなかこうはできないもんですよ」
太郎「どうもです」
お褒めを受けていると
編集「ちょっと待ってください」
と言って席を立ち漫画を持ってくる。
その場で読まされる。静かだ・・・。
読んでみると10作目と似たようなテーマの漫画で、急いで読み終えるとオイラの作品はこうで、こっちの作品はああだと、いろいろとアドバイスをもらう。
誉めているばっかりでは編集の仕事は勤まらないのである。
編集「この原稿ちょっと預かってもいいかな?」
太郎「な、何に?」
編集「編集長に見せたいんだけど、今日不在でね。来週には返しますから」
太郎「おおせのままに」
打ち合わせはそれにて終わる。
編集長に見せるのかぁ、とドキドキしながら、見せてどうなるんだろ?と色々と妄想を膨らませて、土日にドラクエをクリアし、週が明けた頃、携帯が鳴る。
「先日はどうも」
来た。
つづく(予定では終わるはずだったんだけど)



